笑顔で円満な相続・司法書士・行政書士伊藤祐基のブログ

汗をかきながら揉めないための相続を研究している名古屋市の司法書士・行政書士です。『揉めない相続研究所』 自分の考えや、相続のこと、思ったことなどを自由に書いていきます。

遺言書が存在が、争いごとを増やす?

一般的に遺言書があると何が便利になるのかというと、『手続き』の部分が大きいです。

つまり遺産分割協議書が不要となるので、遺言書にそった遺産分割協議ができます。

あとは、各金融機関や法務局等のそれぞれの個別の提出書類が違うだけであり、

大まかな流れは、さほどの違いはありません。

 

なので遺言書何のために作るのか?と聞かれれば、紛争防止というより手続きの簡素化という側面の方が強いとも言えます。

 

もちろん、被相続人の意向を生前に残すことで、残された相続人にも被相続人の考えを理解してもらうという側面もあります

 

ただ、理解することと、納得することとは違います。

特定の相続人に財産が偏った遺言書の内容だと、軋轢を生じさせることも少なくありません。

 

遺言書はあくまでも被相続人の意思表示ですが、

遺言書を作りたいと思っているのは、意外にも相続人さん側から依頼を受けることが多いです。

私が今まで遺言書業務を受けた中では8~9割が相続人側からの依頼でした。

 

ここが揉めるポイントなのです。

 

相続人の中にも、財産の承継が多い相続人と少ない相続人がいるのです。

 

財産の承継が多い相続人であれば、遺言書は書いて欲しいですよね。

一方、財産の承継が少ない相続人であれば、遺言書と形にして欲しくないと思われる方も少なくないです。

 

つまり、財産の承継が少ない相続人が納得いかずに、

『遺言書を作成した時は、父は認知症だった。』

『兄がそそのかして、父に遺言書を作成させた。』

と言った争いごとに発展していってしまう可能性があります。

 

なので、

私は遺言書作成のお客様には、下記のように提案します。

『遺言書を作成する人が、遺言書を作成する前に、口頭で良いので相続人を集めて遺言書の内容を説明する。又は、遺言書を作成した後に、同様の説明する。』

 

たしかに一見面倒な作業にも見えるのですが、生前なら何度も書き直しはできます。

一度作成しても考えが変わることもあります。

だけど、亡くなった後に知らさせると、亡くなる前に知っているのでは、

気持ちの整理方法がかなり違ってきます。

 

実際にあった事例として、お亡くなりになった後、すぐに遺言書を発見して、

相続人同士で承継する財産に開きがあり、お葬式中に兄弟で喧嘩したという事例も

あります。

 

相続税対策』として、相続税を減らすことも大切なことです。

それと同時に『遺産分割対策』、つまり相続人同士が揉めない対策も、同時に考えていって欲しいと思います。